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やれる気のミナモト

「人にどう見られるか」ではなく「自分が相手をどう見ているのか」が大切。

陶山 浩徳 氏

陶山 浩徳

アービンジャー・インスティチュート・ジャパン株式会社
代表取締役

※役職はインタビュー当時のものです。

今までの経歴を教えてください。

工業系の大学を最低の成績で卒業後、大手自動車メーカーの販売店に就職しました。整備士として2年ほど働きましたが、もっと世間を知る事ができる仕事がしたくて上司に相談したところ、営業を薦められ、営業に異動したのです。高級車を売ることで、企業の社長と接する機会ができました。2年間営業をし、そこそこの成績を収めることができたことで調子に乗った私は、その後独立して仲間4人で魚や新鮮野菜を販売する商売を始めました。しかし、仲間割れの大失敗です。その後、生活のため仕方なく再就職した先は、農協関連の食品メーカーで農協の婦人部の方へ漬物の漬け方の講習会をして商品を買ってもらう仕事でした。その後、独立を考えているならと義理の父が経営する会社に誘われて勤めることになりました。乳業メーカーの商品の出入庫管理を行う会社です。飲料水などは季節商売ですから、特に夏は忙しく、多くの派遣社員を使っていました。その時に派遣会社やスタッフ、さらにはその仕組みにいろんな不満を感じ、それがのちの事業の大きなヒントになるのです。時代の流れとともに12年間働いたその工場は新工場移転の為に閉鎖する事になりました。悩んだ挙句、私はその法人を引き継ぎ、派遣事業を立ち上げました。派遣事業に関しては全くの素人でしたので、上手くいくかどうかはわかりませんでしたが、3ヶ月間だけがんばってみようと思い、期間限定で21歳の社員と二人でスタートしました。今まで顧客として感じていた不満を活かして、工場、倉庫、ドライバーに特化した派遣を行いました。3ヶ月で「なんとかなる」という手ごたえを感じ、最初の2年間こそ資金繰りは厳しかったですが、その後は順調に業績を伸ばし、今年で5年目になります。社員11人、派遣登録者数1500人、年商1億7千万円にまで成長しました。現在は私がいなくても、3人のマネージャーが会社を切り盛りしてくれています。

経営者として経営の秘訣は何ですか?

当たり前の事ですが、「一生懸命やること」です。私の場合は3ヶ月の期間を決めて背水の陣で臨みましたから、そうせざるをえなかったのですけれどもね。いきなり大きな事を考えるのではなく、今ある中でできる事をまずは考えるべきです。また常に自分に足りないものは何かを考え、解決策を練っていますね。失敗は早くしたほうがいい。失敗もひとつの情報ですから。早く失敗すればそれだけ早く情報を得られ、そしてその先の成功も早くつかめます。

「箱」に出会ったのはいつですか?

派遣会社を立ち上げて2年くらいすると、運転資金にも余裕が出てきました。事務所の改装もしましたし、自分自身もほしい車や洋服などを買えるようになりました。努力、根性と言われ続け会社は軌道に乗ったのですが、でもそこに夢見ていたような自由で幸せな状態はありませんでした。あったのは普段と変わらない日常でした。会社にいても常にイライラしており、「社員は自分のライバル」「足りない人」「自分がいないと何もできない人」と思っていました。常にモヤモヤとした気持ちでいっぱいでした。何のために仕事をしているのか、誰のために仕事をしているのか、自暴自棄に陥って行きました。いやでした。全てが。そんな時に、ある知人から「箱」の本を紹介してもらったのです。出版社に問い合わせたところ絶版になっていたのですが、インターネットの中古本販売でなんとか購入できました。現在販売している緑色の本「自分の小さな箱から脱出する方法」の前身です。早速読んでみると、まさに目からウロコの連続でした。人の気持ち、自分の気持ちが手に取るようにわかりました。そこにはまさに自分のことが書かれていたのです。すっきりしましたし、世間がこんなに暖かいとこだったのかと目を疑いました。そして安心し、落ち着きました。でも他の人も自分と同じように考えるのか、気になりました。そこで、私がファシリテーターをつとめ、社員10人と1日かけて勉強会を開きました。そうしたところ、みんな、本の中の登場人物と同じように感じ、同じ状況だったのです。これで我々のスタッフが楽しく仕事ができるようになると実感した私は、社内教育の教材として本を使用したくて、早速アメリカにいる著者に問い合わせてみました。そこでシンガポールで行う2日間のセミナーを紹介してもらいました。セミナーに出席してみてさらに「箱」のロジカルな答えに驚きました。これは会社内だけではもったいない、客先にも伝えてあげたい、さらには日本中の人々に伝えてみたい。自分の心の動き、人間の心の移り変わりを知らないのは悲劇だと。この事実を知れば、私と同じように悩んでいる多くの人達が救われるのではないかと思うようになりました。

「箱」とはどんな内容なのでしょうか?

自己欺瞞の解決法を発見したのは、哲学者のテリーウォーナーを中心とした学術団体のアービンジャー・インスティチュートです。この本は解りやすく作られていますが、実は高度な人間学の専門書であり、見事に心を科学していますね。つまり「箱」とは自己欺瞞の事なのです。良心や正義感は誰でも持っているものなのに、それに反して一度自分を欺いて自己裏切りをすると「箱」に入ってしまいます。人は自分が犯した過ちを、自分は正しいと思い続ける為に自己正当化を始めるわけです。自分はより良い人、相手はより悪い人に仕立てあげて行くわけです。PAGE TOP

今後の目標や予定はありますか?

町内単位で「問題解決できる人」を作りたいと思います。問題とは家庭の問題や会社の問題、その他人間関係の問題と言われるあらゆる問題があります。問題を抱えている人に対して、「箱」の解決法を伝える事で貢献してほしいのです。誰でも箱に入った経験を持っています。私は今でも箱に入ります。ただ、それを解決する知識を持っていないだけです。だから、私たちが知識を伝えれば、みんな自分の経験と結びついて腹に落ちるわけです。一人でも多くの問題解決できる人を育てるためにセミナーやファシリテータートレーニングを行っています。アービンジャーのセミナーは1日目に自分自身が箱に気づき箱から出る方法をお話し、2日目は「職場編」「家庭編」「医療編」「教育編」のコースに分かれ、組織で、みんなで箱から出る方法をお話します。私は「職場編」が好きですが、本当は医療や、教育の現場の人達に聞いてほしいと思います。ファシリテータートレーニングは、自らがセミナーを行えるようにトレーニングします。

最後に若者にひと言お願いします。

先日も、喫茶店でお茶している時、隣の席から「仕事と家庭は別だ」という声が聞こえてきました。それを聞いて私は思いました。「同じ自分がやるんだから、区別なんかできっこない」。家庭も会社も、どちらも同じ自分なんです。同じ自分がやるのだから、いつでもどこでも自分の「あり方」に注力しましょう。どうしても私たちは「より格好よく見られたい」と思いがちですが、「人にどう見られるか」ではなく「自分が相手をどう見ているのか」が大切です。相手の為を思ってか、それとも自分がより良く見られるために利用しているのか?たとえば、人前で話すとき「俺ってかっこいいだろう」ではなく「何を伝えたいか」という、得たい結果に注力する、それが大切です。