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やれる気のミナモト

チャンスは自分が動いた結果として得られるもの。

安永 成隆 氏

安永 成隆

株式会社ラプター
常務取締デザイン事業本部長

※役職はインタビュー当時のものです。

今までの経歴を教えてください。

もともと、デザイナーを目指したきっかけは、高校時代に中学の同級生の「絵書くの、上手いんだからデザイナーとかいいんじゃない!」の一言でした。正直、その頃グラフィックデザイナーって何する人かよく分かりませんでしたけど…。その友人の何気ない一言がなければ、違う仕事をしていたかもしれないと今でも思います。
社会人になって、最初は20人規模のデザインプロダクションに就職しました。ポスター、パンフレット、冊子など紙媒体のデザインをしている会社です。同期は4人いたんですが、同期には負けたくないという気持ちは人一倍強かったですね。当時は今のようにパソコンが普及している時代ではありませんので、デザイナーというと手作業が中心で、職人的な要素が強かったんです。デザイナーへの憧れでこの世界に入ったものの最初の1年間は下積みで、先輩のやったデザインを版下というものに仕上げる作業が中心でした。デザインなんか殆どやらせてもらえませんでした。だから先輩のやってる仕事がとにかくかっこよく見えたものです。「早く自分もそういう仕事がしたい!」という想いのみで、がむしゃらに頑張り、1年後に社長に直訴。結果、念願のデザインチームに配属となりました。ちなみに、その時同期はみんな辞めていました。残業が多くてきつかったんだと思います。それか、理想と現実が違ったんですかね。デザイナーって意外に地味な作業も多かったりするので・・・。その会社で4年ほど働いた後、2年ほどフリーでやっていたんですが、何を思ったか「自分一人でもできるかもしれない!」と思い込んでしまったんですね。完全に勢いのみで独立しました。そこそこ業績も良かった時もあったのですが、経営に関する知識などは全くなかったので、将来に対する漠然とした不安は常にあり、26歳のとき、再就職を決意。社員1,000人規模の大きな会社です。デザイナーがMacを使うようになったのもちょうどこの頃ですね。デザイナーだけでも当時40人位いたと思います。そこで5年半働くことになります。一つのクライアントばかりやっているとすぐに飽きてしまう性格なので、しょっちゅうチームを変えてもらってました。かなり、自分勝手なデザイナーだったと思います。デザイナーという仕事は、しばらく同じ会社でやると、また新しいことにチャレンジしたくなるんですよね。だから転職する人が多くて定着率が低いんです。一匹狼的に腕を上げていく人が多い。私も当時を振り返ると、自分の作品には絶対的な自信があり、それゆえに社内でのコミュニケーションを疎かにしていました。コミュニケーションの必要性をあまり感じていなかったんです。お客様に対しても、真のニーズや要望を汲み取ろうとはせず、自分の考えを押し付けていたように思います。それに気付いたのは、次の制作会社に移ってからです。その会社でグラフィックデザイナーを中心とした部署の立ち上げを任されることになったんです。当然部下もついたんですが、今までのように自分本位では部下はついてきてくれなかったんですね。安永成隆 氏どんなにカッコいいデザインを作れたとしても会社の目指す方向性と私の動きや指示があまりにかけ離れて移ってしまうと、部下も目指す方向を見誤まってしまう。このままではいけないということにようやく気付き、いったん自分の技術力だけに頼るのは捨てました。それからは他事業部との連携や社の行事にも積極的に参加するようにし、自分の行動を一から変えてみたんです。口で言うよりも、自分の行動を見せていかないとダメだと思って。この頃、周囲とコミュニケーションを取りながら仕事を進めていくことがいかに大切かということを改めて体感しました。デザイナー、ライター、営業、カメラマン、イラストレーターなどいろんな人がかかわって、一緒になって仕事をして、それを取りまとめるのがディレクターの仕事。誰が偉いわけでもありません。もともとその会社は派遣のデザイナーで対応していたので、最初は「デザイナーのチームなんて社内に必要なのか」という批判的な声もありましたが、3年かけて15名の体制となり、社内でも認知されるような部署にすることができました。自分の中で3年という目標でやってましたから、その時点での達成感はすごくありましたね。その後、別の会社で営業をしながら、マネージメントを中心とした業務を集中的に学び、現在の会社、ラプターに来たわけです。様々な経験を経て現在に至りますが、今考えると私にとっては全て必要な通過点だったように思います。現在はデザイン事業部の責任者として、経営者的な立場から、この会社をよりよいものにしようと日々奮闘しております。

この仕事のやりがいは何ですか?

10年ほど前の話になりますが「企業のニーズばかり重視していて、自分の好きなことができずイヤだな」とモチベーションが下がっていた時期もありました。そんなとき、ある企業のロゴを作った際に、出来上がったロゴを見て、お客様が本当に喜んでくれたんです。会社の顔となるこれから一生使っていくロゴ。「営業するたびに、自分の名刺に刷られたロゴを見て安永さんを思い出すよ」と言われたときには「デザイナーやってて良かった!」と心から思いましたね。本当にやりがいを感じた瞬間でもあります。このようにお客様からほめられ喜ばれて色々なことに気付かされてきたと思います。今は決して自分本位なものではなく、「お客様と一緒に作り上げていこう」という姿勢で仕事に取り組んでいます。

デザイナーとして、普段どんな勉強をしていますか?

最近は、立場上マネージメントが中心ですので、自らデザインワークをすることは減ってきたんですが、感性は磨き続けないとならないと思ってますから、自然に身に付いてしまっている行動はあります。これはもう職業病でしょう。常に目に映るもの全て気になります。街で見かけるポスター、車内刷り、印刷物、カタログ、雑誌などありとあらゆるものです。「このレイアウトは見やすいな、書体はどうかな」とか「どんな背景で作られた広告なのか、その効果は」とか情報分析するのが癖になってますね。実は、ここ1年フリーマガジンを自分たちで企画して作っていましたので、更に情報収集の範囲が広がったかもしれません。おそらくこの仕事を続けている以上、解放されることはないと思います。(笑)PAGE TOP

今後はどのようなことを行っていきたいですか?

現在は経営者的立場で仕事に携わっていますから、もっとデザイナーが働きやすい職場を作ってあげたいですね。「なぜ、デザイナーは1~2年で辞めてしまうのか」「なぜデザイン会社は徹夜が当たり前なのか」ずっと変えたいと思っていました。だから一つのジャンルにこだわることなくデザイナー自身がチョイスできる環境を作ってあげたり、徹夜をしなくても良いシステム作りをしたり、働きやすくやりがいのある職場の実現を目指しています。昔よく「安永君はデザインだけやっていればいいから」と言われ、背景もわからずに指示されたデザインワークのみを行うことに疑問を持っていたんです。だからうちのデザイナーには、「どういう経緯でなんのために行う仕事なのか」を知ってもらい、極力全工程を見せて理解してもらうようにしています。それと、一番大事なのが、お客様の生の声をデザイナー自身も直接聞かないとより良いものはできないと思っています。ですから、打合せなども積極的に行かせるようにしています。うちのデザイナーの採用基準は「人柄の良さ」です。デザインの技術力は本人次第でどうにでもなりますが、人柄はなかなか変わりませんからね。だからデザイナーとしての経験は浅いスタッフも多いですが、そこは組織力でカバーしています。今後は5カ年計画で社員を50人まで増やしたいですね。そして会社とスタッフがfifty-fiftyでいられる関係がいいと思います。会社も儲かってみんなで幸せになりたいんです。もちろん私自身も会社や社員とともに日々進化していきたいと思っています。

最後に若者にメッセージをお願いします。

まず、動いてみることです。動くというのは、思ったことをやってみればいいんです。考える時間ばかりあるとマイナスのことを考えてしまうでしょう?だからすぐ動く!チャンスは自分が動いた結果として得られるものだと思います。動くことで方向性が初めて見えてくるんです。自分が動くと、それがきっかけで色々な情報を得ることができたり、周囲の人にいいアドバイスをもらえたり、チャンスは確実に広がります。もし、動いてダメだったら今度はやり方を変えてみること。その繰り返しです。ポイントはそのスピードをいかに速めることができるかではないでしょうか。考えているとすぐに時間は過ぎ去ってしまいますから。私たちラプターもお客様から「動きが早いね」と言われる、そういう集団でありたいと思います。