What's YARERUKI?

やれる気のミナモト

ギリギリまで頑張り、やるだけやって、最後は「なるようにしかならない」とスイッチを切り替える。

提箸 欣也 氏

提箸 欣也

翼法律事務所 弁護士

※役職はインタビュー当時のものです。

今までの経歴を教えてください。

慶応義塾高校からエスカレーター式に慶応義塾大学に進み、大学では法学部法律学科を選びました。それと同時に体育会相撲部に入部しました。高校までは柔道をやっていたのですが、大学の体育会相撲部がつぶれそうだと聞いて、それだったら建て直しを図ろうと思い相撲部を選んだのです。頼まれるとイヤといえない性格ですね。卒業後は日本生命保険相互会社に入社しました。しかし入社3年でニッセイを退職し、それから司法試験合格を目指して勉強を始めました。28歳のときに初受験し、6年後の34歳でやっと合格しました。それから研修を経て、今の仕事に就いています。

なぜ一流企業を辞めてまで弁護士を目指されたのですか?

実を言うと、大学生の頃はまだ何がやりたいのかわからずに、体育会採用でなんとなくニッセイに入社したと言うのが正直なところです。そして神戸支社に営業として配属されました。営業といっても、自分の母親と同じくらいの営業の方々のマネージメントが主な仕事です。彼女たちの相談に乗ったり、飲みに連れて行って盛り上げたりするのが私の仕事です。ニッセイは大変すばらしい会社でしたが、当時は「このままでいいのだろうか?」と常に考えており、自分自身のモチベーションは決して高くなかったと思います。企業から大学院に派遣される制度に応募しようかとも思いましたが却下されてしまいました。そんなときにあの阪神大震災に遭遇したのです。入社3年目の出来事です。ボランティア活動に参加しました。救出作業の手伝いをしたり、水を運んだり、亡くなる人を目の当たりにしたり、それはもうかなりのショックでした。この出来事を通じ「自分はこのままではいけない。何か別の道で人のために役立つ仕事をしたい。」と強く思うようになりました。実家もサラリーマン家庭ではなかったので、サラリーマンを辞めることにそれほど抵抗はありませんでした。それからもう一つの理由として、勉強に対するコンプレックスがあったことも大きな要因だと思います。私は高校から受験もせずに大学まで行って、就職も体育会採用でしたから勉強する機会があまりなかったんです。だから無性に勉強したくなりました。勉強することで自分の力を試したいと思いました。日本一の生命保険会社を辞めて目指すんだから日本一の資格を取ろうと思いました。それで弁護士を目指したわけです。

7年間の受験期間はいかがでしたか?

厳しかったですね。受験仲間以外との接点は徐々に減っていくし、親戚や知り合いなどからは「いい加減に止めて働きなさい」というようなことを言われるし、不安になることも多々ありました。でもそんな自分を支えたのは、ひとつには良い仲間です。当時の仲間たちはみんな合格して弁護士になりました。優秀な仲間と本気で切磋琢磨できたので、モチベーションを維持できました。そして二つ目には「絶対に受かるんだ」という強い信念です。成績もけっして悪くはなかったですし、いつかは受かるという自信もありました。そしていつも「弁護士になったらこうなりたい」というような夢ばかり見ていました。そんなに大きな夢ではなくて、「みんなに褒めてもらえる」とか「お金の苦労がなくなる」とかそんなレベルでいいんですよ。
受験直前の3ヶ月間はバイトもやめ、朝6時から夜12時くらいまで毎日机に向かっていましたが、普段はバイトしながら、毎日5~6時間勉強していました。1週間単位で計画をたて、その日の予定はその日のうちに必ず消化するように心がけました。自信を裏付ける勉強量を確保しました。大学4年間の体育会で心身ともに鍛えられたのが役立ちましたね。
それにニッセイでの社会経験も、現在弁護士の仕事をするうえで大変役立っています。会社相手の仕事が多いですから。

司法試験に受かるタイプはどういう人ですか?

いろんなタイプの人がいるので、一概には言えませんが、司法試験に受からない人は「言い訳ばかりする人」「逃げ道ばかりを作ってしまう人」「プライドばかり高く他人からの評価を嫌う人」だと思います。これらのことは、仕事でも共通して言えることだと思います。受かるコツは、合格後の自分をイメージし続けることです。自信の裏づけとなる勉強量、具体的には暗記とその応用力をつけるよう勉強しましょう。そして二つ目は目的意識の高い優秀な仲間を持つことです。
私は若い頃、実家が営む事業の倒産や両親の離婚、父親の死や阪神大震災など、苦しい経験や悲しい経験をしました。そんなとき、いつまでも悩んでいても仕方ないので、「なるようにしかならない」と気持ちのスイッチを切り替えられるようになったんです。受験や仕事でもそうです。ギリギリまで頑張るけれども、どこかのタイミングでスイッチを切り替えるというか、基本的には楽観的なのでしょうね。でもこのように良い意味で「なるようにしかならない」と思えることがパワーの源になっていると思います。

弁護士という職業のやりがいは何ですか?

現在多いのは、交通事故に関する仕事や不動産関係、それから企業顧問としての仕事ですが、やはりクライアントから感謝の言葉をもらったときが一番やりがいを感じます。「先生のお陰で助かりました」とか。もちろん結果が出ないときもあるので、そういう時はとても辛いのですが、でもそこにいたる経過を見て「ありがとう」と言ってくれる人もいます。
ほとんどの仕事は、人の縁や紹介です。だから出会いを大切に、現在は人脈を広げている最中です。仕事の内容も間口を狭めずにいろんなことに挑戦したいと思います。何かの専門になることもいいのですが、特化してしまうとそれで失敗したときのリスクも大きいですからね。
現在「民事介入暴力被害者救済センター運営委員会」に所属していて、今春には青林書院から企業防衛に関する書籍を共著で出版予定です。読者は企業の人事総務の方を想定しています。また社団法人警察庁管内特殊暴力防止対策連合会と東京3弁護士会共催で、模擬株主総会も実施します。毎年大変ご好評をいただいており、企業の総会担当者数千人の方々に出席いただいております。今春は私も社外取締役の設定で出演予定です。

最後に若者たちにメッセージをお願いします。

若いうちは間口を狭めないほうがいいと思います。いろんな経験をしたほうがいいです。自らふさいでしまうのはもったいない。そこに何があるかわからないのですから。いろいろな可能性を試し、自分にあったものが見つかったら迷いなく突き進んでください。